2022/06/29

6月 講習会

 『秋花のための幹、枝の仕立て』

講師 星隈 秀雄

梅雨時期の特徴及び注意点

・梅雨の時は雨が長く続くので、病害虫が死に害が少なくなる。
・窒素分が流れやすくなるので、秋の開花期まで残らない程度に梅雨が終わる前(7月中)に追肥すること。
・雨が降ると、黒星病やうどんこ病が発生しやすくなるので、発生を抑えるため消毒を行うこと。

秋花のための幹、枝の仕立て

・この時期、
①光を株元までまんべんなくあてること、
②薬をまんべんなくいきわたらせること、
③風通しを良くすることが重要である。
・このため、枝が込み入っている場合、
夏の剪定の前に剪定を行い枝の整理を行うこと。この場合、不要な枝やどうせ夏剪定時には切ってしまう枝だけ切ること。
・途中シュートが出ている場合、
親枝の先の部分を残すか剪定するかは枝の混み具合で判断すること。(会員持参の鉢植えを材料にして説明)
・ただし、枝を切らなくても曲げてやることで混雑を避ける方法もある。
・シュートが出ていない場合、
枝を倒してシュートを出させるが、弱い枝ではシュートも弱くなる。
・追肥を行うこと。
・鉢植えは水切れに注意すること。

薬剤散布

・梅雨時は雨が多いが、乾く時間が1時間あれば良いので、1週間~2週間間隔で薬剤散布を行うこと。
・病気に掛かってからでは遅いので、かかる前の予防消毒を行うこと。
・トマトでは酢に消石灰を混ぜて散布しているが効果がある。

質疑

・高めシュートの扱い方は?
シュートの成長を考えて出来るだけ低い位置のシュートを残すようにしている。
・ハイブリットティーとフロリバンダの見分け方は?
名前からネットで種類が分かる。ハイブリットティーの方が枝が大きい。なお、管理の方法は同じであるが、ピンチはフロリバンダの場合は1回、ハイブリットティーの場合は2~3回行うなどの違いはある。
・多肥品種と少肥品種の取り扱い上の違いは?
多肥品種は、肥料を多く施しても花が狂わない。少肥品種は、肥料を多く施すと花が狂ってしまう。従って肥料を撒く回数が同じでも量を変える必要がある。
魅惑:花が狂いやすい。春は良い花が咲かない。
ロイヤルハイネス:少肥品種に分類されているが、多肥でも問題ない。



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『座談会』

内容

前回の座談会での調査で、会員の栽培状況がかなりばらついていることが判ったので、今回は「主に地植え栽培を行っているグループ」と「主に鉢植え栽培を行っているグループ」の2班に分かれてそれぞれの栽培においての問題点・疑問点等について座談会を行った。私は前者のグループに参加したのでその内容については以下の通りです。

・地植えのメリットは水遣りや土替えが不要なことにある。但し、植え替えを行うと嫌地現象で育ちが悪い場合がある。対策として天地返しを行う方法があるが、80cm~100cmほど掘り返すことになり相当の労力を要する。このため、バラの植え込み間隔は80cm~100cm程取ることにより作業性を良くすると共に、隣から侵入してきた根を取り易くなる。但し、バラの近くに他の花を植えている場合は作業ができない。また、隣からの根の侵入を防ぐ方法として、50cm程の深さのシート(ナフコにある畔波板等)を入れて植え込み間隔を狭めている例もある。なお、水はけの良い土地では適宜散水が必要である。
・天井にシートを掛けると病気の発生を防ぐことが出来る。また、梅雨入り前にバーク堆肥等を用いて5cm~10cmマルチングすることにより病気の発生を少なくすることが出来る。
・古いバラの木では、高いところにしか花が咲かない場合があるが、2月の剪定時期に低いところでの剪定を行う他、鋸目を入れてシュートを出させるようにする。
・2番花が綺麗に咲かない原因は、アザミウマのしわざである。4月にオルトラン粒剤やダントツ粒剤又はスタークル(共にネオニコチノイド系)を撒いておくこと。但し、小さな害虫は直ぐに増えるので繰り返し撒く必要がある。
・多肥品種と少肥品種、高さの異なる品種等は、最初からグループ分けして植える必要がある。「初恋」は樹勢が強く咲きすぎる傾向がある。
・化成肥料はあまり入れない方が良い。入れても盃1パイ程度とすること。




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『鉢植えバラの管理』

講師 江上 司郎司

鉢の置き場所他

・鉢植えも地植えもやることは同じであるが、鉢植えの場合限られたスペースでの栽培となるので少し育て方が異なる。鉢植えで一番の失敗は葉を落としてしまうことである。これから夏場にかけて水切れを一度でも起こすと葉が落ちてしまい回復が難しくなる。
・鉢の置き場所には注意が必要である。コンクリートの上や地面に直接置くのはやめてブロック等を敷いて鉢底の風通しを良くすること。特にマンション等ではコンクリート張りになっているので注意すること。
・「五風+十雨」という言葉がある。5日に1度風が吹き、10日に1回雨が降ると豊作となり、世の中安泰になるという意味である。

肥料

・鉢替え等により植え替えを行うと、根は10日~2週間くらい休眠状態となり動かない。その間に肥料を与えても効果は無いので根が動き出してから与えること。
・化成肥料は、水遣りを行うと一部流れ出てしまうものもあるが、鉢中に肥料分が行きわたってしまう。根は少量の肥料しか吸収できないので余分な肥料は与えないこと。肥料の種類によって与える量は異なるのでメーカーの使用方法を良く見ること。
・マグアンプK(N:P:K:Mg=6:40:6:15)について
バラの根の部分では樹液(クエン酸)が出ており、Pはクエン酸だけに溶ける。このため、この肥料は根の部分に入れて使用する。小粒で2カ月(追肥用)、中粒で1年間、大粒で2年間有効である。因みに、Kは半分は水溶性、半分はクエン酸に溶ける。Nは水に溶ける。このため、マグアンプKは元肥としては優秀であるが、これ以外には使えない特殊な肥料である。
使用上の注意としては、パッケージに書いてある使用料の半分から始め、その後の状況を見て使用量を増やしていくこと。
・鉢植えの場合は、使用する肥料の種類を変えないこと。使っていくうちにコントロールが付いてくる。

消毒 

・ひさしがあり雨が当たらない場所ではうどんこ病やハダニが発生しやすい(特にマンションが多い)。うどんこ病は処理がしやすいが、ハダニは繰り返しの消毒が必要となる。HTの場合は無農薬で栽培するのは無理である。
・消毒剤は、商品名が異なっていても同じ薬品の場合があるので、良く確認しローテーションを組んで消毒すること。
・カリグリーン(炭酸水素カリウム)やハーモメイト(炭酸水路ナトリウム)水溶剤は使用回数制限が無いので開花前には遠慮なく使用できる。因みに、カリグリーンの方が薬害が出にくいので使い易い。なお、消毒剤を散布する場合は、殺虫剤も混ぜて散布すること。
・水和剤、水溶剤、乳剤のちがい
水和剤:水に溶けず沈殿する。従って散布途中でも混ぜる必要がある。
水溶剤:水に溶ける。
乳 剤:水和剤と同じようなものだが、溶剤を使用しており僅かだが沈殿物が出るの で、使う前に撹拌して使用すること。
・薬剤を混ぜる順番は先ず展着剤を入れること。理由は、展着剤は界面活性剤(アイス
クリーム、チョコレート、歯磨き粉等に使用されている)なので水和剤を溶けやすく
する効果がある。効果は大きい。

摘蕾・摘芽

(会員持参の7号鉢のバラ(新苗)を教材にして説明)
・良く育っておりサイドからシュートが出ている。
・脇芽が出ている。脇芽がでると生殖活動が始まり、ベイサルシュートが出なかった。親枝の脇芽は全て取ること。
・シュートは必ず2~3回ピンチすること。2段目以降は花を咲かせても良い。花後は新たな芽が出てくるが芽は全て取ること。また、親枝の脇芽は全て取ること。10月には養分が不足して来るので10号鉢に植え変えてやるとベイサルシュートが出てくる。・シュートが出ない場合、根元部にテープを巻き、ペンチで茎を潰して枝を倒すことによりシュートを出す方法がある。

その他

・会員の鉢植え苗がかなり弱っていたので、鉢の底を抜いて鉢ごと地植えして管理をしていたら半年後に立派に成長した事例の照会があった。






(6月は野田が担当しました。)